2023.02.07

インプラントという選択肢、メリット・デメリットを理解して選びましょう

 お口の中の病気や問題に対しては、それぞれ幾つかの治療法があります。歯が抜けてしまった場合も同じです。専門的には、歯がなくなった原因・患者様の年齢やライフステージも重要です。

また、患者様自身にとっては、無くなっている位置(奥歯か前歯か等)や・治療を受ける場合の痛みや通院期間・間隔等、健康保険が適用可能か治療費用のことを含め考えないといけないことが沢山あります。

歯が無くなったからといって、生死に係わることはありませんが、それだけにご自身に最も適切な治療方法を担当歯科医と十分相談して、決断されることをお勧めします。

このコラムでは、歯を無くした場合の治療方法として最近一般的になってきたインプラント治療について、他の治療方法と比較しながらご紹介をさせて頂きます。歯を無くしてお困りの患者様の一助となれば幸いです。

歯が抜けてしまった場合の4つの選択肢

  1. インプラントによる治療
  2. ブリッジによる治療
  3. 取り外し式の入れ歯(可撤性義歯)による治療
  4. 無理をすれば食べれるので、そのまま放置する ※1

※1 絶対お勧めできない選択肢です。歯科医院に行かなくて良いという利点があるかも知れませんが、残っている歯への負担が増えたり、噛み合わせのズレ等を起こします。強いては将来的に失う歯の数を増やすことになります。残っている歯の数が少ないほど、健康寿命が短くなることが報告されていますので必ず治療されることをお勧めします。

インプラントによる治療

抜けた部分の顎の骨(顎骨)に人工歯根(デンタル インプラント)を埋め込んで、無くなった歯根の代行をさせます。その上にセラミック等で歯(歯冠部)を作り、歯があった状態を再現する治療法です。

骨の中に埋めるので、骨量(残っている骨の量)が少ない場合は、骨を増やす手術(GBR・サイナスリフト等)が必要になります。

【メリット(利点)】
 周囲の歯を削ることも無く、負担を掛けることもありません。ほぼ歯が無くなる前と同じように食事(噛むこと)ができ、審美性(見かけ)も損なわれません。

  • 周囲の歯への負担が少ない
  • 歯がなくなる前と同じように食事ができる
  • 審美性が損なわれない

【デメリット(欠点)】
 インプラントを埋める為の手術(埋入手術)が必要です。その為、麻酔時の僅かな痛みと術後の痛みや腫れが起こることがあります。健康保険が適用されない為、他の治療法よりも高価になります。

  • 術後に痛みや腫れを伴うことがある
  • 保険適用されないため、高額

インプラント治療例

■左下の奥歯1本が欠損

手術前
手術後

■左上の前歯1本が欠損

手術前
手術後

ブリッジによる治療

欠損部(抜けた部分)が1~2本の場合に選択される一般的な治療法です。抜けた部分の両脇の歯を削って、被せを作り抜けている部分の人工の歯(ダミー・ポンティック)と連結して接着剤で固定する方法です。

【メリット(利点)】

素材により審美性(見栄え・自然観)に差が出ますが、ほぼ使用感に問題ありません。保険が適用される場合では、治療費は安価に抑えることも出来ます。

【デメリット(欠点)】

抜けた部分の負担を両脇の歯が代行する為、支えになる歯の負担が増し寿命が短くなる可能性があります。
また、虫歯や歯周病の発生率もたかくなります。抜けている本数によっては、削らないといけない歯の本数が多くなります。

ブリッジによる治療例

治療前
治療後

接着性ブリッジ

主に前歯が1歯程度抜けた場合に選ばれます。両脇の歯をほとんど削りませんが、接着剤で維持されているだけなので、外れやすい欠点があります。

治療例

治療前
治療後
装置の裏側

本来、歯は歯種により強さも生ている方向も異なります。その為、ブリッジにより固定されると、本来の噛む力の掛かり方とは異なり、支える歯の負担増加になります。支える歯が増えるほど複雑になり、悪い状況になります。当然、虫歯や脱離の可能性も高まります。

入れ歯(可撤性義歯)による治療

抜けた部分の義歯床(歯茎の部分:ピンクの部分)に人工の歯を作って補い、金属製の金具で数カ所の歯に引っ掛ける方法です。俗に云う取り外し式の入れ歯です。欠損が3歯以上の場合に選択されることが多います。

メリット(利点)

周囲の歯を削ることがなく、欠損歯数が多い場合でも保険適用であれば、治療費を安価に抑えられることが出来ます。

デメリット(欠点)

欠損部に床があるので、嚥下や発音の邪魔になること、取り外し式であることの面倒くささがあります。その為、慣れるのに時間がかかります。また、噛む力(咬合力)を欠損部の歯茎で支えるので、定期的な補修が必要になります。

欠損歯数にも依りますが、噛む力は歯がある場合よりも弱くなります。

入れ歯は、抜けた部分の歯茎(欠損部粘膜)で噛む力(咬合力)を受けています。粘膜は、その力によって痩せてきたり収縮したりし、入れ歯は沈下していきます。その為、定期的にピンクの床の部分(義歯庄部)の補修が必要です。これを疎かにしますと、引っ掛けている歯をぐらつかせたり、あごの骨を減らします。